建設業の人手不足対策7選|原因・データと今すぐできる解決策

「求人を出しても応募が来ない」「ベテランが引退して現場が回らない」「受注したいのに人が足りなくて断るしかない」——建設業の人手不足は、もはや”よくある悩み”ではなく、会社の存続に関わる経営課題です。
実際に、2025年の人手不足による倒産件数は建設業だけで113件にのぼり、過去最多を更新しました。人が足りないことで仕事を断り、売上が下がり、資金繰りが悪化し、最終的に事業が立ち行かなくなる。この悪循環に陥る建設会社が、年々増えています。
しかし、正しい対策を打てば、この状況は変えられます。本記事では、建設業の人手不足がなぜここまで深刻化しているのか、最新のデータをもとに原因を整理し、今すぐ取り組める7つの具体的な対策をお伝えします。
特に、補助金を活用した設備投資による「省力化」は、採用に頼らず生産性を上げる現実的な方法として、多くの建設会社で成果を出しています。「人を増やす」以外の選択肢を知ることで、経営の打ち手が大きく広がるはずです。
1. 建設業の人手不足はどれほど深刻か?最新データで見る現状
まず、建設業の人手不足がどの程度深刻なのか、数字で確認しましょう。感覚ではなくデータで現状を把握することが、正しい対策を打つための第一歩です。
就業者数はピーク時から約200万人減少
建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに減少を続けています。2024年時点では約477万人となり、ピーク時から約30%、実に200万人以上が減りました。
この減少は、単に「景気が悪くなったから」ではありません。バブル崩壊後の公共工事削減によって業界全体が縮小し、一度離れた人材が戻ってこなかったことが大きな要因です。そして近年は、景気回復やインフラ老朽化対策で工事需要が増えているにもかかわらず、人材の供給が追いついていない「需給ギャップ」が拡大しています。
さらに深刻なのは、実際に現場で手を動かす「建設技能者」の減少です。技能者数は1997年の464万人から2024年には303万人まで落ち込み、ピーク時の65%にまで縮小しています。つまり、現場の最前線で働く人材が3分の2以下にまで減っているのです。
💡 ポイント
管理者や事務職を含めた全体の就業者数より、技能者の減少スピードのほうが速い——「管理する人はいるけど、実際に工事をする人がいない」という歪な構造が生まれています。
高齢化が加速し、若者は入ってこない
建設業の就業者の年齢構成にも、大きな偏りがあります。
55歳以上の就業者が全体の約37%を占める一方で、29歳以下はわずか約12%。全産業平均と比べても、高齢者の割合が突出して高い構造になっています。
60歳以上の技能者は全体の約25.7%を占めており、今後10年以内にその大半が引退すると見込まれています。つまり、今いる職人の4人に1人が近い将来いなくなるということです。にもかかわらず、新卒の建設業への入職者数は2024年に約3.8万人まで減少し、11年ぶりに4万人を下回りました。
人手不足倒産が過去最多を更新
帝国データバンクの調査によれば、2025年の人手不足倒産は全業種で427件にのぼり、3年連続で過去最多を更新。そのうち建設業は113件で、初めて100件の大台を超えました。
さらに、大手・中堅の建設会社の約7割が「2026年度内は大型工事を新規受注できない」と回答しているという報道もあります。工事の需要はあるのに、人手不足が原因で受注できない——この構造が、建設業界全体の成長を阻んでいるのです。
⚠️ 人手不足は「経営リスク」です
人手不足倒産は3年連続で過去最多を更新中。「うちはまだ大丈夫」と思っていても、ベテランの引退や受注機会の喪失は突然やってきます。今のうちに対策を始めることが重要です。
2. なぜ建設業の人手不足は解消しないのか?3つの根本原因
データで深刻さを確認したところで、次に「なぜ建設業では人手不足が解消しないのか」、その根本的な原因を3つに整理します。原因を正しく理解しないと、対策が的外れになってしまいます。
原因①:労働環境のイメージと実態のギャップ
建設業は「きつい・汚い・危険」のいわゆる3Kのイメージが根強く残っています。実際に改善が進んでいる現場も多いのですが、そのイメージが若い世代の就職先選びに大きく影響しています。
また、他産業と比較して年間の総労働時間が長く、休日数が少ない傾向にあります。特に4週8休(完全週休2日)が実現できていない現場はまだ多く、「休みが少ない業界」という認識が就職希望者の減少につながっています。
原因②:賃金水準と処遇の問題
建設業の賃金は上昇傾向にあるものの、他産業と比較すると依然として見劣りする部分があります。特に若手の初任給やキャリア初期の年収が、IT業界や製造業と比べて低い傾向にあり、若者の建設業離れを招いています。
加えて、社会保険に未加入の事業者がまだ存在するなど、処遇面での課題が業界全体の信頼性にも影響しています。「ちゃんとした会社で働きたい」と考える若い世代にとって、こうした業界構造はハードルになります。
原因③:2024年問題による影響の顕在化
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これにより、これまで長時間労働で何とかカバーしていた現場が、同じ体制では工期に間に合わなくなるという問題が顕在化しています。
「残業でカバー」ができなくなった今、同じ仕事量をこなすには、人を増やすか、1人あたりの生産性を上げるかの二択を迫られています。しかし前述の通り、人を増やすのは容易ではありません。だからこそ、「少ない人数でも同じ成果を出せる仕組みづくり」が急務なのです。
3. 今すぐ取り組める!建設業の人手不足対策7選
ここからは、建設業の人手不足に対して今すぐ取り組める具体的な対策を7つご紹介します。すべてを一度に実行する必要はありません。自社の状況に合ったものから始めてみてください。
対策①:設備投資で1人あたりの生産性を上げる
人手不足対策というと「人を採る」ことを考えがちですが、実はそれ以上に効果的なのが「設備投資による省力化」です。
たとえば、ICT建機(情報通信技術を搭載した建設機械)を導入すれば、熟練オペレーターでなくても高精度の施工が可能になります。3Dデータを活用した測量では、従来2〜3人で半日かかっていた作業が、1人で数時間に短縮されるケースもあります。
「人が足りない」→「だから採用する」の前に、「設備投資で1人分の仕事をカバーできないか?」と考えてみてください。初期費用が気になるかもしれませんが、後述する補助金を活用すれば、負担を大幅に抑えることができます。
対策②:補助金を活用して設備投資の負担を軽減する
設備投資に使える補助金は、想像以上にたくさんあります。2026年時点で建設業が活用しやすい主な補助金をご紹介します。
ものづくり補助金は、革新的な生産プロセスの改善を目的とした設備投資に使えます。最大2,500万円(大幅賃上げ特例適用で最大3,500万円)の補助が受けられる可能性があり、ICT建機や自動化設備の導入にも活用できます。
省力化投資補助金は、まさに人手不足解消のための省力化投資を支援する制度です。2026年も継続されており、最大1億円規模の補助が受けられます。カタログから対象製品を選ぶ方式で、申請のハードルも比較的低いのが特徴です。
IT導入補助金は、勤怠管理や工程管理などのITツール導入を支援します。現場の業務効率化やペーパーレス化を進めたい場合に活用できます。
💡 中小企業こそ補助金を活用すべき
「うちのような小さな会社でも使えるの?」と思われるかもしれませんが、補助金の多くは中小企業を対象にした制度です。むしろ、中小企業だからこそ使える制度が多いのです。
対策③:DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
「DX」と聞くと大企業の話に感じるかもしれませんが、中小建設会社でも始められるDXはたくさんあります。
たとえば、クラウド型の工程管理ツールを導入するだけでも、現場と事務所のやり取りが大幅に効率化されます。図面の確認や進捗報告をスマートフォンで行えるようになれば、わざわざ事務所に戻る移動時間が削減されます。
ドローンによる測量や写真撮影も、以前は高額でしたが、近年は導入コストが下がり、中小企業でも手が届くようになっています。高所や危険箇所の確認作業をドローンで代替することで、安全性の向上と人手の削減を同時に実現できます。
BIM/CIM(建設情報のデジタル管理・共有の仕組み)の活用も進んでおり、設計から施工、維持管理までの情報を一元化することで、手戻りや情報伝達ミスの削減につながります。
対策④:労働環境の改善で離職を防ぎ、採用力を高める
新しい人を採用することも大切ですが、今いる人材が辞めない環境をつくることも同じくらい重要です。
具体的には、完全週休2日制の導入が効果的です。「うちの業界では無理」と思われがちですが、工期設定の見直しや、閑散期と繁忙期の業務配分を工夫することで実現している会社も増えています。
また、社会保険の完備、退職金制度の整備、資格取得支援など、「この会社で長く働きたい」と思える処遇を整えることで、若手の定着率が大きく変わります。
こうした取り組みは、採用の場面でも強力なアピールポイントになります。求人票に「完全週休2日」「資格取得費用全額負担」と書けるだけで、応募数が増えたという声も少なくありません。
💡 「目に見える改善」から始めよう
現場の安全装備の充実や休憩スペースの確保、トイレの洋式化や空調付き休憩所の設置など、一見小さなことに思えますが、現場の満足度に直結します。キャリアパスの「見える化」も重要で、成長の道筋が見えることで若手社員のモチベーションと定着率が大きく変わります。
対策⑤:外国人材の活用
特定技能制度や技能実習制度を活用した外国人材の受け入れは、人手不足対策の有力な選択肢の一つです。
特定技能制度では、建設分野で一定の技能と日本語能力を持つ外国人を雇用できます。即戦力として活躍できる人材も多く、適切な受け入れ体制を整えれば、現場の貴重な戦力になります。
ただし、外国人材の活用には、言語面のサポートや生活面でのフォロー、適正な賃金の支払いなど、受け入れ企業側の準備が不可欠です。「安い労働力」という発想ではなく、「共に働く仲間」として迎え入れる姿勢が、長期的な定着につながります。
なお、外国人材の受け入れにかかる費用(渡航費、研修費、住居費など)の一部を助成する制度もありますので、活用を検討してみてください。
対策⑥:多能工化とスキルの標準化
1人の職人が複数の作業をこなせる「多能工化」は、限られた人数で現場を回すための有効な方法です。
たとえば、鉄筋工が型枠の基本作業も行えるようになれば、工種ごとに別々の職人を手配する必要が減り、人員配置の柔軟性が大幅に向上します。
また、ベテラン職人の技術やノウハウを動画マニュアルやチェックリストとして「見える化」し、標準化する取り組みも効果的です。属人的な技術を組織の財産に変えることで、若手の育成期間を短縮し、ベテラン引退後の技術断絶を防ぐことができます。
💡 多能工化のコツ
いきなり全員に多くの技能を求めるのではなく、まず「隣接する工種」から段階的に広げていきましょう。スキルマップ(誰がどの技能を持っているかの一覧表)を作成して社内共有すれば、「この人がいないと工事が止まる」というリスクを事前に把握できます。
対策⑦:監理技術者の兼務制度を活用する
2024年12月の制度改正により、ICTなどで工事現場の状況確認ができる場合、請負代金が1億円未満の工事について、監理技術者・主任技術者が2現場まで兼務できるようになりました。
この制度をうまく活用すれば、技術者の配置に余裕が生まれ、同時に受注できる工事の数を増やせる可能性があります。Webカメラやクラウド型の施工管理ツールを導入して遠隔監視の体制を整えることが、この制度を活用するための前提条件です。
技術者不足で受注を断っていた会社にとっては、比較的すぐに効果が出る対策といえるでしょう。
💡 IT導入補助金で費用を抑える
この制度を活用するためには、遠隔での状況確認が可能な通信環境やカメラ設備の整備が必要です。IT導入補助金を活用すれば初期投資を抑えることも可能です。
4. 事例から学ぶ:人手不足を乗り越えた建設会社のケース
ここでは、実際に人手不足対策に取り組み、成果を出した建設会社のケースをご紹介します。
事例1:ICT建機導入で3人分の作業を1人で実現
従業員25名の土木工事会社A社は、ベテラン重機オペレーターの引退を機に、ICT建機への投資を決断しました。ものづくり補助金を活用し、自己負担を抑えた形でICTバックホウを導入。3Dデータによる自動制御により、経験の浅いオペレーターでも高精度の施工が可能になりました。
結果として、従来3人で行っていた丁張り・施工・検測の工程が実質1人でできるように、1現場あたりの必要人員が大幅に削減。人手不足で断っていた工事も受注できるようになり、年間売上が前年比で2割増加しました。
※本事例は複数の支援実績をもとに構成したイメージです
事例2:労働環境改善で若手の応募が3倍に
従業員15名の住宅リフォーム会社B社は、毎年の雤職率の高さに悩んでいました。特に20代の若手が入社しても1〜2年で辞めてしまう状況が続いていました。
そこで、まず完全週休2日制を導入。合わせて資格取得支援制度(費用全額会社負担+取得時の報奨金)を新設し、社内研修の体系化にも着手しました。
求人票にこれらの制度を明記したところ、翌年の新卒応募数が前年の3倍に増加。さらに、既存社員の離職率も大幅に改善しました。
※本事例は複数の支援実績をもとに構成したイメージです
人手不足対策は「組み合わせ」で効果が倍増する
上記2つの事例からもわかるように、人手不足対策は単独で行うよりも、複数の施策を組み合わせることで相乗効果が生まれます。設備投資による省力化と、労働環境改善による人材定着を同時に進めれば、「少ない人数で高い成果を出しながら、入ってきた人材が長く活躍する」という好循環が生まれます。
重要なのは、自社の最大のボトルネックがどこにあるかを見極め、そこから優先的に手を打つことです。「全部やらなきゃ」と焦る必要はありません。1つずつ、着実に進めていくことが大切です。
5. よくある質問(Q&A)
Q1. 小規模な建設会社でも補助金は使えますか?
はい、使えます。ものづくり補助金や省力化投資補助金は、中小企業・小規模事業者を主な対象にした制度です。従業員数が少ない会社でも申請でき、むしろ小規模事業者向けの優遇枠が設けられているケースもあります。「うちの規模では無理だろう」と思い込まずに、まずは対象要件を確認してみてください。
Q2. 補助金の申請は難しくないですか?
正直に言えば、申請書の作成には一定の手間がかかります。特に事業計画書の作成が最大のハードルです。ただし、専門家のサポートを受ければ、採択率を上げながら申請の負担を大幅に軽減できます。建設業に詳しいコンサルタントに相談すれば、自社の状況に合った補助金の選定から申請まで一貫してサポートを受けられます。
Q3. DXを始めたいけど、何から手をつければいいですか?
まずは「一番時間がかかっている作業」を洗い出すことから始めましょう。多くの建設会社では、日報や写真整理などの事務作業に膨大な時間を費やしています。クラウド型の施工管理アプリ(1アカウント月額数千円程度のものもあります)を導入するだけでも、1日30分〜1時間の時間短縮につながるケースは珍しくありません。
Q4. 設備投資をしたいが、資金に余裕がありません。
設備投資の資金については、補助金に加えて、日本政策金融公庫の低利融資や、信用保証協会の保証付き融資を活用する方法があります。補助金と融資を組み合わせることで、自己資金の持ち出しを最小限に抑えながら設備投資を行うことが可能です。まずは現在のキャッシュフローを把握し、無理のない投資計画を立てることが重要です。
Q5. 人手不足対策の優先順位はどうすればいいですか?
おすすめの優先順位は、まず「今いる社員が辞めない環境づくり」(労働環境改善)、次に「少ない人数で成果を出す仕組みづくり」(設備投資・DX)、最後に「新しい人材の確保」(採用強化・外国人材活用)の順です。離職を止めないまま採用だけ頑張っても、穴の空いたバケツに水を入れるようなもの。まずは足元を固めることが大切です。
Q6. 2024年問題への対応が間に合っていません。今からでも遅くないですか?
2024年4月の施行から時間は経っていますが、今からでも対策を始めることは十分に意味があります。まずは自社の労働時間の実態を正確に把握し、長時間労働の原因を特定することから始めましょう。原因が「人手不足による業務の偏り」にある場合は多能工化や設備投資による効率化が有効です。原因が「非効率な事務作業」にある場合はDXツールの導入で解決できるケースが多いです。
Q7. 建設業の人手不足は今後どうなりますか?
残念ながら、短期間で人手不足が解消する見通しは立っていません。60歳以上の技能者(全体の約25%)の大量退職がこれから本格化する一方で、若手の入職者数は減少傾向が続いています。2030年には現在より数十万人規模で技能者が不足するという予測もあります。だからこそ、「人を増やす」だけでなく、「少ない人数で同じ成果を出せる体制」を今のうちに構築しておくことが、5年後・10年後の会社の命運を分けるのです。
6. まとめ:人手不足は「経冶戦略」で乗り越える
建設業の人手不足は、単なる「人の問題」ではありません。これは、会社の将来を左右する経営課題です。
本記事でお伝えした7つの対策をもう一度整理します。
1つ目は、設備投資で1人あたりの生産性を上げること。2つ目は、補助金を活用して投資負担を軽減すること。3つ目は、DXで業務を効率化すること。4つ目は、労働環境の改善で離職防止と採用力強化を図ること。5つ目は、外国人材を戦力として活用すること。6つ目は、多能工化とスキルの標準化を進めること。7つ目は、監理技術者の兼務制度を活用すること。
大切なのは、「人を増やす」だけに頼らないことです。設備投資やDXによる省力化は、採用が難しい今だからこそ、最も現実的で効果の高い打ち手です。そして、その設備投資を後押ししてくれる補助金制度は、正しく活用すれば大きな味方になります。
「うちの会社でも使える補助金はあるのか」「どの設備に投資すべきか」「キャッシュフローへの影響はどうなるのか」——こうした疑問は、一社一社の状況によって答えが変わります。
人手不足の問題は、放置すればするほど解決が難しくなります。ベテランの引退、若手の流出、受注機会の喪失——これらが同時に進行すれば、数年後には取り返しのつかない状況に難りかねません。逆に、今この瞬間から動き始めれば、5年後に「あの時行動して良かった」と思えるはずです。
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