【事例紹介】ケースごとに見るM&Aの成功例と失敗例を比較しながら解説!
企業の成長や存続を図るための手段として、M&A(企業の合併・買収)は重要な戦略の一つです。
しかし、M&Aは成功する場合もあれば、失敗する場合もあります。
失敗すると会社が存続できなくなるケースも稀ではありません。
本記事では、M&Aの基礎知識をおさらいしながら、様々なケースごとの具体的な成功事例と失敗事例を比較し、そこから学ぶべきポイントを解説します。
これからM&Aを想定している事業者さんには必見の内容です!
この記事はこんな人にオススメ!
- 仙台市でM&Aを検討している企業の経営者
- M&Aを今後検討している事業者
- M&Aに関する知識を得たい方
- M&Aの成功例とリスクについてしっかりと知りたい方
- M&Aの専門家をつけようか悩んでいる事業者
M&Aって何??
M&Aは、企業の合併や買収を指します。これにより、企業は新たな市場や技術を獲得し、成長を目指すことができます。
M&Aとは、企業の合併(Mergers)や買収(Acquisitions)を指します。
これは、企業が他の企業を統合することで規模や競争力を拡大しようとする戦略の一つです。
具体的には以下のような形態があります。
合併(Mergers): 二つ以上の企業が一つの企業に統合されることを指します。通常、合併後の企業は合併前の企業の資産や負債を引き継ぎます。
買収(Acquisitions): 一つの企業が他の企業の株式や資産を取得し、経営権を掌握することを指します。買収には友好的なもの(友好的買収)と敵対的なもの(敵対的買収)があります。
M&Aは、企業が市場シェアを拡大したり、新しい市場に進出したり、技術やノウハウを取得したりするための効果的な手段とされています。
しかし、成功するためには適切な戦略と計画、そしてしっかりとしたデューデリジェンスが不可欠です。
M&Aの主な目的
市場シェアの拡大: 同業他社との統合によって市場シェアを増やすことができます。
新市場への進出: 他の地域や国に拠点を持つ企業を買収することで、新市場に迅速に進出することができます。
コスト削減: 経済規模の拡大により、コストの削減や効率化が可能になります。
技術やノウハウの取得: 買収対象企業が持つ特許、技術、専門知識を取得することができます。
多角化: 事業ポートフォリオを多様化し、リスクを分散することができます。
M&Aを成功させるためには、綿密な計画と慎重な実行が求められます。また、統合後の組織文化の調整や従業員の適応も重要な要素となります。
M&Aの種類
M&A(合併と買収)は、企業が成長戦略の一環として他の企業と合併したり、他社の株式を買収したりするビジネス戦略です。
これにより、市場シェアの拡大、技術や人材の獲得、新規市場への進出などの利点が得られる場合があります。M&Aは企業の競争力を高める手段として、広く活用されています。
ここからはM&Aの三つの種類について紹介したいと思います。
水平統合
同業他社との合併を指し、市場シェアの拡大や競争力強化を目的とします。
水平統合を行うことで市場シェアの拡大、コスト削減、競争の緩和、新市場の開拓であり、企業はこれにより経済規模の拡大やシナジー効果を実現します。
しかし、水平統合が特定の市場で競争を実質的に制限する場合、公正な競争と市場の発展を阻害するため、独占禁止法や競争法などの経済法によって規制され、刑事罰の対象となることがあります。
垂直統合
垂直統合は、企業がサプライチェーンの異なる段階にある企業を買収または合併する戦略を指します。
具体的には、原材料の供給から製品の製造、流通、販売に至るまでの異なる業務を統合することです。
垂直統合には、上流(原材料や部品の供給)と下流(製品の流通や販売)の統合が含まれます。
これにより企業は、以下の利点を享受できます。
まず、サプライチェーンの各段階で発生するマージンを内部化することで、総コストの削減が可能になります。また、原材料から最終製品までの品質を一貫して管理することで、製品の品質向上が図れます。
垂直統合により企業は、自社の競争力を強化し、市場での優位性を確保することができますが、一方で、多額の投資が必要となるため、資金力や経営資源の充実が求められます。
縦割り統合
関連産業との統合を指し、製品やサービスの多様化や新規市場への進出を可能にします。
各種類のM&Aは企業の戦略的目標に応じて選択され、業界内での競争力強化や経済的効果を追求します。
M&Aのプロセス
それでは、実際にM&Aを行う際の流れを解説します。
M&Aの実行は会社の命運を左右する重要な経営判断であり、慎重な検討が求められます。
それにはまず、正しく情報を集めることが不可欠です。
しかし慎重に検討を重ねるあまり、M&Aを行う最適なタイミングを逃してしまう可能性もあります。
一定の検討を進めたのちには、実際に行動に移しましょう。
最初に取り掛かる準備として「必要資料の収集」「株価算定」と「企業概要書の作成」があります。
株価算定で算出する価格は、あくまで目安の価格になりますが、自社の実態を把握しM&Aの条件を固める上で算出しておく必要があります。
初期の準備が整った段階で、マッチング(相手先選び)に移ります。
・相手先企業を選定するにあたり、重要な見極めポイントは主に「事業規模や業績など定量情報」「同業種か異業種か」「社風」の3つ。
・譲受け企業側は「成長戦略」「相乗効果」「事業承継」などの視点で検討を行います。
・相手はマッチングサービスで探したり、第3者から紹介されたりすることが多いです。
両社が互いに検討を進めたいという意思を固めたら、それぞれの経営トップ、オーナーが直接顔を合わせる「トップ面談」を行います。
事業に関する質問はもちろん、書面からは読み取ることができない互いの人間性や経営理念などを把握し、相互理解を深める場として設定されます。
トップ面談を終えてから基本合意契約をするまでの検討が両者にとって最も重要なフェーズといわれます。
譲受側(買い手)からポイントを見ていきましょう。
基本合意書を締結した後に行われるのは譲受け候補企業による買収監査(デューデリジェンス,以下DD)です。
財務・税務・法務・労務などの分野で、譲渡企業側が何か問題を抱えていないか調査する、いわば健康診断のようなものです。
M&A後に大きな問題が発覚することがないように、譲受け候補企業側が公認会計士など第三者の専門家に依頼し、実査が行われます。
最終条件を調整する局面で、譲渡側(売り手)が気を付けることは、①優先する条件の決定や売却を先送りにしないこと、②意思決定を他人任せにしないこと、の2点です。
これまでの過程ですり合わせた条件にすべて合意したら、最終契約書を結びます。
最終契約後、従業員や取引先など関係者への説明、情報開示(ディスクロージャー)を行います。
ディスクロージャー(情報開示)のタイミングは、M&Aを実行した直後が一般的ですが、必要に応じて、重要取引先や幹部社員、M&Aプロセスに大きく関わってもらう従業員(経理担当者等)には、事前に開示することがあります。
重要取引先や幹部社員への事前開示や賛同がクロージング条件(資金決済条件)となることもあります。
PMI(=Post Merger Integration)とは、M&A成立後の「経営統合プロセス」を指します。
新経営体制の構築・経営ビジョン実現のための計画策定・両社協業のための体制構築・業務オペレーション、ITシステム統合といった一連の取り組みのことを指し、M&Aによるリスクの最小化と、成果の最大化を目的としています。
M&Aのケースごとの成功事例
ではこのようなM&Aですが実際にどのように企業は活用しているのでしょうか。
今回は「小規模企業」「大企業」「海外企業」の三パターンにわけてその事例を紹介したいと思います。
小規模企業の成功事例
まず初めに小規模の中小企業についての成功事例を見ていきましょう。
森塗装工業株式会社
森塗装工業株式会社は、2022年8月18日に三和建設株式会社によって買収されました。
森塗装工業は、1964年に創業し、主に塗装工事や防水工事、シーリング工事などを手がけてきましたが、事業継承に課題を抱えていました。
一方で、人口減少と市場競争の激化に直面し、新築事業の展開が困難とされていました。
三和建設株式会社は自社の競争力強化と技術・サービスの向上を目指し、森塗装工業との統合を決定しました。
これにより、森塗装工業は三和建設の完全子会社となり、三和建設は建物の長期利用を促進する改修工事事業を強化する方針です。
REMパーソナルジム
女性専門のパーソナルジムである、REMパーソナルジム 新宿店を譲渡。
東京と沖縄の2拠点でパーソナルジム事業を展開する事業者が、沖縄での事業拡大に集中するためにM&Aによる譲渡を検討しました。
そこで同じくパーソナルトレーニングジムを運営する株式会社GASYに事業譲渡の形で新宿店を譲渡されました。
最終的に譲渡を決めた理由としては、同じ業態のパーソナルトレーニングジム事業を運営していたことが大きかったようです。
結果的に新宿店の営業をGASYに任せ、譲渡した方は沖縄のパーソナルジム展開に集中することができました。
大企業の成功事例
それでは次に大企業の成功事例についてみていきましょう。
ニトリホールディングス
2022年5月、ニトリホールディングスはエディオンとの資本業務提携を発表しました。
エディオンは業界5位の大手家電量販店であり、2013年にはLIXILが株式の8%を取得しています。
一方、ニトリホールディングスは家具やインテリアを販売する会社で、「ニトリ株式会社」「島忠」を傘下に持つ持株会社です。
両社は家庭で必要な商品を扱うことから、経営資源やノウハウの共有を通じて事業拡大を目指すこの資本業務提携を実施しました。
具体的には、ニトリホールディングスはLIXILからエディオンの株式の8.6%に相当する102.7億円を取得し、さらに市場から1.4%を取得して、エディオンの株式10%を保有することに成功しました。
ミライト・ホールディングス
2022年1月、ミライト・ホールディングスは西武鉄道の100%子会社である西武建設の株式95%を取得し、子会社とする契約を結びました。
西武建設は西武ホールディングスの建設部門を担う総合建設会社であり、新型コロナウイルスの影響で鉄道やホテルの事業が伸び悩んでいた時期でした。
一方、ミライト・ホールディングスは通信建設業界の大手であり、通信工事会社を総括しています。
この買収は、ミライトが通信建設事業の拡大を図るために、西武建設の企画や設計力を活用し、事業の多角化を目指した戦略的なものでした。
海外企業の成功事例
日本たばこ産業(JT)株式会社
JTが買収したのは、米国の主要なたばこメーカーであるRJ Reynolds International(RJRI)です。
当時、RJRIは世界最大のたばこメーカーの一つでした。
一方で、買収を行ったJTは、たばこ事業の他に医薬事業や食品事業も手がけており、2019年従業員数は61,975人でした。
この買収の背景には、消費者の健康志向やたばこにかかる税金の引き上げなどがあり、JTのたばこ販売本数が伸び悩んでいたことが挙げられます。
JTは海外での市場拡大を目指し、販売本数を1,000億本にする目標を掲げており、そのためには大型の企業買収が必要と判断し、RJRIの買収に踏み切りました。
結果JTは約9,400億円という巨額の投資でRJRIを買収し、これによりクロスボーダー取引を通じて従来比約10倍のたばこ販売本数を確保することができました。
アサヒグループホールディングス
アサヒグループホールディングスは、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー、ABI)の子会社であるCUB(Carlton & United Breweries)を買収することで合意しました。
CUBは豪州のビール事業を中心に幅広い品揃えを持つ企業です。
この買収により、アサヒグループはアサヒビールなどを中核とする飲料メーカーとして、国際市場での拡大を目指しています。
特に「Great Northern」などの有力ブランドを含む取得により、日本、欧州、豪州の三極を核としたグローバルな事業基盤を構築し、海外での販売拡大と収益の安定化を図る計画です。
また、豪州市場においてもビール事業を強化し、アサヒグループが持つ技術やノウハウを活用して品質や味わいの向上に取り組む予定です。
アサヒグループはこれまでにも2016年以降、積極的な海外M&Aを推進しており、今後もグローバルな競争力を高めるためにさらなる事業拡大を目指しています。
ケースごとに見るM&Aの失敗事例
ここまでM&Aの成功例について紹介してきましたが、もちろん必ずしも成功するというものではありません。
多くの研究では、M&Aの成功確率は50%程度であるとされています。
では実際にどのような失敗例があるのでしょうか。
今回はケースごとに三つに分けて紹介していきたいと思います。
経営方針の違いによる失敗
異なる経営方針を持つ企業同士のM&Aが、統合後の運営において軋轢を生み、最終的には事業の停滞を招いた事例です。
ダイムラーとクライスラーの合併
1998年にダイムラー・ベンツとクライスラーが合併して誕生したダイムラークライスラーは、戦略的な不一致、経営方針の不統一が原因で失敗したといわれています。
ダイムラーの厳格な管理スタイルとクライスラーの柔軟な経営スタイルの衝突や、両社の市場アプローチの違いが合併後問題となり経営が進まなくなってしまいました。
また、ダイムラーが実質的に主導権を握ったことで、クライスラー側の士気を低下させることにもつながってしまいます。
結果として、ダイムラーは2007年にクライスラーを売却し、合併は失敗に終わってしまいました。
タイム・ワーナーとAOLの合併
2000年、メディア大手のタイム・ワーナーとインターネットサービスプロバイダーのAOLが史上最大の企業合併を行いましたが、経営方針の不一致と市場変化が原因で失敗しました。
タイム・ワーナーはコンテンツ重視、一方AOLはインターネットサービスと広告収入に依存しており、両社の方針が一致しませんでした。
さらに、インターネットバブルの崩壊でAOLの株価が急落し、シナジー効果が得られず、2009年にAOLはタイム・ワーナーから分離されました。
文化の違いによる失敗
企業文化の違いが原因で、従業員同士の摩擦が生じ、統合がスムーズに進まず、業績が悪化したケースです。
クアドラント・エンジニアリングとゴリラ・ガラスの合併
スイスのクアドラント・エンジニアリングは、特殊なプラスチック材料を製造する企業で、一方アメリカのゴリラ・ガラスは高性能ガラス製品を手掛ける企業です。
2007年に両社が合併し、新しい高性能材料の市場を開拓することを目指しました。
スイスの厳格で精密な生産プロセスと、アメリカの迅速で革新的な開発アプローチが衝突したことにより、共同プロジェクトがうまく進まず、効率が低下してしまいました。
このような文化的な要因で最終的には両者合併3年後に分離し、合併は失敗に終わりました。
ルノーと日産の提携
1999年、フランスの自動車メーカーであるルノーは、日本の自動車メーカーである日産と提携し、両社のシナジー効果を期待して共同経営を開始しました。
しかしながらフランスのルノーは中央集権的な管理スタイルを採用していた一方、日産はより分散型の経営スタイルを持っており、この違いが経営方針の調整を困難にしました。
一時的には成功を収めたものの、後に両社の関係は悪化し、経営統合の効果が薄れました。
特に、トップ経営者の逮捕などの問題が浮上し、提携の長期的な持続性が疑問視されました。
財務状況の見誤りによる失敗
買収先の財務状況を正しく把握できず、後に巨額の負債が発生し、買収企業自体の経営が危機に陥った例です
カナダ・ドライ(Canada Dry)とドリンク部門の合併
1999年、カナダ・ドライの親会社であるドリンク大手のカドベリー・シュウェップス(Cadbury Schweppes)が、アメリカの飲料メーカーであるドリンク部門を買収しました。
カドベリー・シュウェップスはこの買収により、飲料市場での競争力を高めることを期待しました。
しかしながらドベリー・シュウェップスは、ドリンク部門の将来の収益性を過大に見積もり、実際の収益は予想よりも低迷しました。
ドリンク部門のパフォーマンスが期待に応えられず、カドベリー・シュウェップスはその後数年で苦しむことになり、最終的にはこの部門を売却することになってしまいました。
エンロンとアラメックスの合併
2001年、エンロン(Enron)は、中東のエネルギー企業であるアラメックス(Aramco)との提携を発表しました。
エンロンは、アラメックスとの提携により、エネルギー市場での地位を強化することを目指しました。
しかしエンロンは合併を進める中で、自社の財務状況を虚偽に報告していました。
実際には、エンロンの財務状況は非常に悪化しており、リスクが過小評価されていたのです。
結果的にエンロンの財務スキャンダルが発覚し、同社は2001年に破産申請をしました。
まとめ
M&Aは企業成長の強力な手段ですが、成功するためには多くの準備と慎重な判断が必要です。
成功事例と失敗事例から学び、適切な戦略を立てることで、企業の成長を実現することができます。
当社の強み
トリガーコンサルティングではM&A・事業承継のサポートを行っております。
・事業承継実績は100件越え
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