二段階買収の手順から、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説!

皆さんは、「二段階買収」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。

企業が企業を買収するM&Aという行為の中に、二段階買収といった手法があります。

本記事では、二段階買収の説明や、二段階買収の手順、メリット・デメリット、実際の事例などについて
図などを用いながら詳しく解説していきたいと思います。

二段階買収を考えている事業者様や二段階買収について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事はこんな人におススメ

  1. 二段階買収をしようとしているしている中小企業
  2. M&Aをしようとしているしている中小企業
  3. 会社の後継者がいない
  4. 廃業したくない中小企業
  5. 従業員やノウハウを後世に継がせたい
目次

二段階買収とは

まず初めに、二段階買収について説明したいと思います。

二段階買収とは、M&Aなどで、対象会社の株式を全て取得する際に、対象会社の全ての株式を一括で取得できない場合に、二段階に分けて買収する方法のことを指します。

上場会社のように多数の株主が自社の株を保有している場合や、非上場会社でも従業員などといった多くの人が自社の株式を保有している場合などに用いる手法となります。

一般的には、上場企業などの多数の株主が自社の株を保有している場合は、一段階目に株式公開買付(TOB)を行い、二段階目にスクイーズアウトを行うことが多いです。

一方、非上場会社の場合は、大株主などから株式を取得して、その他の株主や、従業員などが保有している株式をからスクイーズアウトを用いて取得するのが一般的な手法です。

ここで出てきた見慣れない単語、株式公開買付(TOB)スクイーズアウト
次はこの2つの単語について図を用いながら説明していきます。

株式公開買付(TOB)とは

まず初めに、株式公開買取(TOB)について説明します。

株式公開買付(TOB)とは、不特定かつ多数の株主に対して買付価格や期間などの公告等を通じて、その保有する株券等を売ってくれるように勧誘し、取引所外でそれらの株券等を買い付けることを指します。

企業を買収する場合(M&A)や合併・子会社化など企業再編の際、またはMBO(経営陣による買収)で非上場化する場合などに利用されることが多く、投資者保護の観点に立った所要の要件の下に株式を買付けすることになっています。

TOBの買付条件では株数に上限が設けられる場合があるので、事前に詳細を確認する必要があります。

スクイーズアウトとは

次に、スクイーズアウトについて説明します。

スクイーズアウトとは、少数株主などから大株主が強制的に株式を取得するために株主を締め出す手法のことを指します。

スクイーズアウトは先述したような複数の株主が自社の株式を保有しており、全員の意思決定などに膨大な時間を要する場合などに、とても活用されます。

また、株式を第三者に売却する際に、複数の株主が株式を保有しており買収自体が難しいような場合にも用いられたりします。

そのほか、長期的な視点で経営を進めたい場合などにスクイーズアウトを活用することで上場廃止を実行する際などにも用いられることがあります。

二段階買収と通常の買収との違い

ここからは、二段階買収と通常の買収との違いについて説明していきたいと思います。

二段階買収と通常の買収との違いとして、どの程度の株式を取得して買収対象会社を子会社化させようとしているのかという点が挙げられます。

通常の買収だと、一定以上の株式を取得すれば、会社の実質的な経営権が事実上支配することができます。
実際、普通決議・特別決議での要件を満たすほどの株式を保有しておくことで、会社の経営の中心に立つことが可能となってきます。

ですが一方で、二段階買収は少数株主に影響されずに、買い取る会社の株式の100%の取得を目指す仕組みとなっています。

二段階買収と通常の買収では、よりスムーズな経営を進めるために、二段階買収が選択されることが全体的にみて、多いです。

強圧的二段階買収とは

二段階買収の中には強圧的二段階買収といったものがあります。

強圧的二段階買収とは、公開買い付けを実施する場合に買付条件を比較的厳しく設定し、少数株主の株式売却を誘導させる方法を指します。

法改正以前は公開買付の申し出に応じないといった選択も取れました。
ですが、法改正後は公開買付の申し出には応じる義務ができたため、買付条件を厳しく設定して公開買付の申し出を絞り込む戦略を取る企業が多くなりました。

二段階買収の流れ

では、どのように二段階買収は行われるのか。
ここからは、二段階買収の手続きを実施する際の手順について説明していきたいと思います。

株式公開買付スクイーズアウトのそれぞれの手続きの手順について詳しく解説していきます。

株式公開買付(TOB)

まず初めに、株式公開買付(TOB)について説明していきます。

株式公開買付(TOB)では、まず株主に対して会社側は情報開示を進めます。
ここでは以下の情報を株主に開示します。

  • 株式買付の目的
  • 株式買付の期間
  • 株式買付の予定数量
  • 株式買付の価格
  • 支配権取得時の経営方針
  • 経営参加を予定している場合の計画

などが主な内容です。

上記の情報を確認した上で、株主は公開買付に同意するか否かを判断し、同意した場合は証券会社に口座を開いて株式を売却するといった流れになります。
そして、予定している買付株式数を満たした段階で、株式買収が終了します。

スクイーズアウト

次に、スクイーズアウトについて説明していきます。

スクイーズアウトでは、応募のなかった株主や連絡が取れなかった株主、少数株主などから株式を強制的に取得します。

スクイーズアウトを実施する場合は、株主総会での特別決議あるいは取締役会での承認が必要不可欠です。
特別決議では議決権保有者の過半数以上の出席と出席者の3分の2以上の賛成票が求められます。

一方で、普通決議では議決権保有者の過半数以上の出席と出席者の過半数以上の賛成票が必要となってきます。

スクイーズアウトの手法

ここからは、スクイーズアウトの手法についてご紹介していきます。

  • 全部取得条項付種類株式
  • 特別支配株主の株式等売渡請求
  • 株式交換
  • 株式併合

手法としては、上記の4つが存在します。
それでは1つづつ見ていきましょう。

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株式とは種類株式のひとつです。

すべての株式を取得するとなると、種類株式に転換できるように種類株式発行会社に変更する必要があります。

種類株式発行会社に変更する場合、まず、会社の定款に変更を加えます。
会社の定款に変更を加えるとなると、株主総会での特別決議が求められることを押さえておきましょう。

デメリットとすると、特別決議を実施すると、どうしても時間・コストがかかってしまいます。
時間・コストがかかってしまうことを念頭に置いて手続きを進めてください。

特別支配株主の株式等売渡請求

特別支配株主の株式等売渡請求9割以上の株式を取得している株主が少数株式を買い取る方法です。

特別支配株主が会社に対して株式等売渡請求実施を通知し、承認を得たら対象の株主に通知を送って手続きを実施することができます。

全部取得条項付種類株式とは違い、株主総会の特別決議を挟む必要がないため、比較的スムーズに実施しやすい方法として知られています。
ただし、初めから9割以上の株式を保有していることが前提の手続きとなるため、採用できるかどうか考えてみてください。

株式交換

株式交換対象の会社の発行済株式をすべて親会社に取得させる方法です。

親会社・子会社の関係を構築する事業再編時に使われることが多い手法で、買収側は自社の株式を対価として用いることも可能です。

自社の株式を用いて取引を行うことで、少ないコストで買収することが可能です。
株式交換を実施することで親会社に株式が集約され、少数株主の株式で端株が発生します。

その株主に対してスクイーズアウトを実施することで二段階買収が実現しやすいです。
ただ、株式の端株が生じた場合にはその部分についても買い取る必要がある点に注意してください。

株式併合

株式併合一定量の株式を1株として集約させる方法です。

スクイーズアウトを実施する際に、株式併合を実施することで少数株式は1株に満たない株式となり、排除しやすい状況になります。

例を出すと、10万株を1株に併合させた場合に、30万株を保有している株主だと3株となり、5万株を保有している株主だと0.5株となります。

ただ、保有する株数が減ってしまうとその期間は自由に株式が売買できなくなってしまう点があるため、他から反感を買ってしまうことも珍しくありません。
ちなみに、株式併合で株数が圧迫されて生じた端株だと株式としての権利が行使できないという点があるので、把握しておいてください。

二段階買収のメリット・デメリット

ここからは、二段階買収のメリット・デメリットについて詳しく説明していきたいと思います。

二段階買収のメリット

まず初めに、メリットからお話ししていきます。

二段階買収のメリットとしては、スムーズに買収手続きが進めやすい点が挙げられます。

通常の買取の場合、少数株主が影響して完全子会社が進められないことが多く見受けられます。
ですが、二段階買収では少数株主からも株式を完全にもらえるので、円滑に完全子会社化を進めることができます。

また、買収後も円滑に経営が進めやすい点も二段階買収のメリットとして挙げられます。

二段階買収を実施すると少数株主を完全排除できるため、買収後に会社の意向に反対する株主への対応の手間が取られることもなくなります。

二段階買収のデメリット

次に、デメリットについてお話しします。

二段階買収のデメリットとして、買収企業のイメージが低下してしまう点が挙げられます。

独裁的に買収を進めてしまえば、買収企業のイメージが低下してしまうとともに、現在ある取引先や顧客からも敬遠されてしまう可能性があります。
また、企業価値や、自社の株価の低下にもつながりかねないため、二段階買収を実施する際には丁寧に説明して、慎重に判断することが重要です

二段階買収の事例

ここからは、二段階買収の事例を2つご紹介したいと思います。

日本生命による三井生命(現 大樹生命)の買収

まず初めに、日本生命による三井生命(現 大樹生命)の買収です。

日本生命は事業拡大を目指して同業界の三井生命(現 大樹生命)の買収を二段階買収の形で進めました。

TOBで約96%の株式を取得し、株式等売渡請求の形でのスクイーズアウトを実施して少数株主排除を図りました。
こちらの事例では思ったような敵対的意思はなく、比較的円滑に二段階買収が進められました。

M&Aの手法二段階買収(株式等売渡請求)
実施日2017年12月
取引価格非公開
背景日本生命の事業拡大

ZホールディングスによるLINEの子会社化

次に、ZホールディングスによるLINEの子会社化です。

ヤフーで知られる国内インターネットサービス大手と、LINEによる事例です。

TOBを実施した後、株式交換と吸収合併により子会社化を実現しました。
双方の経営資源がかけ合わさることで、コマースやECなどさまざまな分野でシナジー効果が生まれると判断し、実施されました。

M&Aの手法二段階買収(株式交換)
実施日2021年3月
取引価格非公開
背景・コマース分野の統合
・配送の利便性向上

まとめ

今回は、「二段階買収の手順から、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説!」と題して、

二段階買収とは
・二段階買収の流れ
・スクイーズアウトの手法
・二段階買収のメリット・デメリット
・二段階買収の事例

について詳しく説明してきました。

本記事が、二段階買収を考えている事業者様や二段階買収について詳しく知りたい方の助けになれば幸いです。

今回も最後まで閲覧いただきありがとうございました。

下記に類似した記事も貼っていますので、是非そちらもご覧ください。

当社の強み

トリガーコンサルティングではM&A・事業承継のサポートを行っております。

・事業承継実績は100件越え
中小企業診断士として専門知識と多くの事例に基づく経験
・各専門家と協力し、財務・法務・税務の各分野にわたる包括的なサポート

M&Aや事業承継にお困りの企業様がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。
詳細は以下のページからご確認ください。

最後に

この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!

この記事の監修

株式会社トリガーコンサルティング
代表取締役 伊藤翔太

経済産業省登録 中小企業診断士
認定支援機関登録

宮城県/仙台市を中心に、
東北の経営コンサルティングをしている。
補助金支援や融資支援などの
財務コンサルティングを始め、Googleマップ、
Instagram、公式LINE等の
Web集客コンサルティングを専門領域としている。

当社の特徴

・200社超の経営支援実績
・補助金採択率97%(35件中34件の採択)
・営業損失300万円の会社を3カ月で黒字化達成
・Web集客支援で、月間新規顧客数を0件⇒10件
など、経営改善から売上アップまでのトータルサポートを得意としており、
建設業、運送業、飲食業、不動産業等の様々な業種に対応している。

目次