【中小企業診断士が解説】M&Aとは?実際の流れや詳細を徹底解説
みなさんは、「M&A」という言葉をご存知でしょうか。
今日、「Mergers & Acquisitions(以下、M&A略)」が日本で徐々に浸透しつつあります。
昨今、「後継者不足」等に課題を感じる中小企業が多い中、
M&Aをご検討している企業様は少なくはないのではないでしょうか?
本コラムでは、
M&Aとはいったいなんなのかという部分から、実際の流れなどといった細かな部分まで徹底解説いたします。
M&Aを実際にご検討されている方・後継者不足に悩む会社様は、
ぜひ最後までご覧になって見てください!
この記事はこんな人におススメ
- M&Aをしようとしているしている中小企業
- 会社の後継者がいない
- 会社の事業が多すぎるため、整理したい
- 廃業したくない中小企業
- 従業員やノウハウを後世に継がせたい
M&Aとは?
まずは、M&Aとは何かについて説明していきたいと思います。
M&Aとは、「Mergers & Acquisitions」の略であり、企業の合併や買収を指します。
企業が他の企業を買収したり、二つ以上の企業が合併して新しい企業体を形成する行為を含みます。
企業の成長戦略として重要な手段であり、競争力の強化、事業拡大、新規市場参入などを目的として行われます。
M&Aの種類
次に、M&Aの種類について説明したいと思います。
合併 (Merger)
ここで言う合併とは、企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになることを指します。
詳しくは下の図をご覧ください。
買収 (Acquisition)
ここでの買収とは、ある会社が他の会社を買ったりすることを指します。
こちらも、詳しくは下の図をご覧ください。
次に、譲渡企業、譲受け企業がM&Aを行う目的について
売却側・買収側それぞれの視点から、詳しく見ていきたいと思います。
売却(譲渡企業)側のM&Aの目的
後継者不在・事業承継問題の解決
後継者不在による事業承継問題を解決する手段として、M&Aは広く浸透してきました。
M&Aを実行し、第三者承継により新しい経営者を迎えることができれば、後継者問題が解決され、企業は存続し続けることが可能となってきます。
中小企業庁の調査によると、中小企業・小規模企業の経営者平均年齢は年々上昇しており、2025年までに70歳以上の経営者が約245万人に達すると言われています。
また、後継者不在の問題を抱える中小企業などは2025年には約127万社に上るとも言われています。
後継者問題を抱えている企業にとって、M&Aは事業承継と事業成長を一度に叶える選択肢になります。
親族や社員に継いでもらうことが難しい場合の解決策にもなります。
経営基盤の強化
買収企業の設備・技術・販路・顧客情報・人材・ノウハウなどの経営資源を得ることで、不足していた経営基盤の強化を果たせます。
さらに、シナジー効果などといった効果によるノウハウや技術の融合、顧客・販路の統合、業務の共有化、設備の共同化などによって、事業拡大の加速が期待できます。
また、事業譲渡などで、採算の合わない事業を譲り渡すことで、経営資源を注力事業に集めることができます。
買収(譲受け企業)側のM&Aの目的
事業の強化・拡大、シェア向上
同業の会社を買収することで、事業の成長と業界におけるシェアの向上が図れます。
結果的には、今の売り上げよりもはるか上を目指せることもできます。
また、関連事業をグループに取り込むことで、事業領域の拡大を実現することもできます。
新規事業への参入
成長戦略として、新規事業に参入することを目的に、M&Aが活用される場合があります。
自社でゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既に事業展開している他社を取り込むことで、人材やノウハウの獲得含めスピーディーな展開が期待できます。
M&Aのメリット・デメリット
次に、M&Aをするメリット・デメリットについて譲渡企業・譲受け企業それぞれの視点でご紹介します。
M&Aのメリット(譲渡企業)
- 従業員の雇用を守ることができる
- 技術やノウハウが承継される
従業員の雇用を守ることができる
M&Aには、従業員の雇用を守ることができるメリットがあります。
特に中堅・中小企業のM&Aの場合、「従業員の雇用維持」が譲渡先への条件のひとつに挙げられます。
M&A後、従業員は新しいオーナーのもと、従来通りの条件で引き続き雇用され続け、顧客や取引先も継承されるケースが一般的となっています。
技術やノウハウが承継される
廃業を選択すると、長年磨いてきた技術や蓄積したノウハウが失われてしまう可能性があります。
せっかく積み上げてきたものがなくなってしまうのはもったいないです。
M&Aによる事業承継では、経営権だけでなく育ててきた技術や試行錯誤を重ねたノウハウも譲受け企業に引き継ぐことができます。
M&Aのメリット(譲受け企業)
- 自社の技術力・生産力向上
- 事業の多角化を推進できる
自社の技術力・生産力向上
M&Aによって譲り受けた会社の技術やノウハウを得ることで、新たな分野への展開、技術力向上につなげることができます。
また、両社の技術・リソースを補完しあうことで生産力向上にもつながります。
事業の多角化を推進できる
M&Aによって、新規事業の参入や、既存事業におけるシナジー創出によって、将来的に他の事業へ進出できる可能性が高まります。
また、多角化は収益の拡大やリスク分散につながります。
M&Aのデメリット(譲渡企業)
- 企業文化のミスマッチ
- 既存顧客や取引先との契約・関係性が変わる可能性
企業文化のミスマッチ
人事や社内システム、組織体系などハード面が統合できても、それぞれが築いてきた企業文化の統一にはソフト面などといった部分の統合など、時間を要します。
福利厚生や権限移譲の範囲、時間外の交流などの統一を無理に推進すると従業員から反発が起きかねません。
そのため、PMIコンサルティングなど外部の専門家を活用しながら慎重に協議を進める必要があります。
既存顧客や取引先との契約・関係性が変わる可能性
M&Aを検討する上で、既存顧客や主要な取引先との契約内容の確認が必要条件となってきます。
注意すべき代表的なポイントとして、チェンジ・オブ・コントロール条項(COC)があります。
これはM&Aなどを理由に一方に経営権の移動があった場合、契約内容に制限がかかる、もしくは解除することができる規定のことを指します。
この規定があった際、契約相手に通知し承諾を得る旨が定められている場合もあります。
契約の相手方の状況を把握し、どのようにコンタクトをするか、そもそもコンタクトをするべきかを含めて検討することが重要になります。
M&Aのデメリット(譲受け企業)
- 短期間では相乗効果が表れにくい
- 統合後の組織再編はスムーズにいかない
短期間では相乗効果が表れにくい
M&Aの検討から実行~成約までおよそ1年半かかるのが一般的です。
そして、M&A実行後からが本番と言っても過言ではありません。
歴史や社風の異なる企業同士が、一朝一夕で上手くいくケースはほとんどありません。
M&A後のシナジーを発揮するには、中長期で取り組む覚悟が必要となってきます。
統合後の組織再編はスムーズにいかない
M&Aによる統合は、進め方を誤ると思うようにスムーズに進まない場合があります。
そのため、基本合意の段階で統合の戦略を深める、組織構成をシンプルにする、情報システム・人事・業務プロセスの対応をしっかりする、などといったPMI(経営統合プロセス)についての準備を進めていくことが重要になります。
M&Aの流れ
次にM&Aの流れについて大まかに説明します。
M&Aの検討
M&Aの実行は会社の命運を左右する重要な経営判断であり、慎重な検討が求められます。
それにはまず、正しく情報を集めることが不可欠です。
しかし慎重に検討を重ねるあまり、M&Aを行う最適なタイミングを逃してしまう可能性もあります。
一定の検討を進めたのちには、実際に行動に移しましょう。
M&Aの準備
最初に取り掛かる準備として「必要資料の収集」「株価算定」と「企業概要書の作成」があります。
株価算定で算出する価格は、あくまで目安の価格になりますが、自社の実態を把握しM&Aの条件を固める上で算出しておく必要があります。
相手を探す
初期の準備が整った段階で、マッチング(相手先選び)に移ります。
・相手先企業を選定するにあたり、重要な見極めポイントは主に「事業規模や業績など定量情報」「同業種か異業種か」「社風」の3つ。
・譲受け企業側は「成長戦略」「相乗効果」「事業承継」などの視点で検討を行います。
トップ面談
両社が互いに検討を進めたいという意思を固めたら、それぞれの経営トップ、オーナーが直接顔を合わせる「トップ面談」を行います。
事業に関する質問はもちろん、書面からは読み取ることができない互いの人間性や経営理念などを把握し、相互理解を深める場として設定されます。
買収条件調整・基本合意書の締結
トップ面談を終えてから基本合意契約をするまでの検討が両者にとって最も重要なフェーズといわれます。
譲受側(買い手)からポイントを見ていきましょう。
買収監査(デューデリジェンス)の実行
基本合意書を締結した後に行われるのは譲受け候補企業による買収監査(デューデリジェンス,以下DD)です。
財務・税務・法務・労務などの分野で、譲渡企業側が何か問題を抱えていないか調査する、いわば健康診断のようなものです。
M&A後に大きな問題が発覚することがないように、譲受け候補企業側が公認会計士など第三者の専門家に依頼し、実査が行われます。
最終条件調整
最終条件を調整する局面で、譲渡側(売り手)が気を付けることは、①優先する条件の決定や売却を先送りにしないこと、②意思決定を他人任せにしないこと、の2点です。
最終契約締結・デリバリー(M&Aの実行)・決済
これまでの過程ですり合わせた条件にすべて合意したら、最終契約書を結びます。
関係者への開示(ディスクロージャー
最終契約後、従業員や取引先など関係者への説明、情報開示(ディスクロージャー)を行います。
ディスクロージャー(情報開示)のタイミングは、M&Aを実行した直後が一般的ですが、必要に応じて、重要取引先や幹部社員、M&Aプロセスに大きく関わってもらう従業員(経理担当者等)には、事前に開示することがあります。
重要取引先や幹部社員への事前開示や賛同がクロージング条件(資金決済条件)となることもあります。
PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)
PMI(=Post Merger Integration)とは、M&A成立後の「経営統合プロセス」を指します。
新経営体制の構築・経営ビジョン実現のための計画策定・両社協業のための体制構築・業務オペレーション、ITシステム統合といった一連の取り組みのことを指し、M&Aによるリスクの最小化と、成果の最大化を目的としています。
まとめ
M&Aとは?
M&Aの種類
M&Aの目的
M&Aのメリット・デメリット
M&Aの流れ
今回の記事ではこちらの5項目に分けて説明してきました。
M&Aは企業成長の重要な手段ですが、その成功には綿密な計画が必要不可欠です。
メリット・デメリットそれぞれあるのは仕方のないことですが、事前の対策をしっかりとすれば、M&Aは会社を継続するにあたっての効率的な手段の一つです。
中小企業においてもM&Aを活用することで、新たな成長の道を開くことが可能です。
ぜひM&Aをする際には、今回の記事を参考にしてください。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
ぜひ他の記事後ご覧になってみてください。
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